読書記録・特別研究員1年目

(2002年10月〜2003年9月)


[地球科学][科学一般][哲学][実用書][文学]

以下は日記からの抜粋です。
読んだ順に並んでいます。


地球科学

自然科学一般

哲学・倫理学

実用書ほか

文学など



未知なる地底高熱生物圏 -生命起源説をぬりかえる(トーマス・ゴールド著,丸武志訳/大月書店)

IODP/OD21の初期科学目標の三本柱の一つである,「地下深層生命圏」のバイブルと言えよう.
この本は「地下深層ガス説」について強力に解説した本である.つまり,地球形成初期にもともと含まれていた炭化水素が,現在に至るまで膨大に残存し,それが地球表層に供給されたものが石油や天然ガスの起源であるとする.つまり,炭化水素資源の生物起源説を否定する!
近年の地球化学的な分析によって,石油や天然ガスの「少なくとも一部」は無機起源であることが明らかになりつつある.しかし,実際には石油を分析すると生物起源分子(バイオトープと呼ばれる)が抽出されることから,従来の説では過去の生物の遺骸が地層中の熱や圧力で熟成することによって石油が生成すると考えられてきたのである(私もそう教育された).しかし,著者はそのようなバイオトープは地殻深部に生息する微生物が炭化水素を代謝することによって生じたと結論する!ここで,「地底高熱生物圏」が推定されるのである.
で,これだけで話が終わらず,この本はさらに暴走して石炭や液成鉱床や地震の発生,生命起源や進化にまで地下深層ガスの関与を主張する.いくつかの論理は明らかにコジツケで,特に地震や続成・化石化作用については知識不足を感じたが,それでも十分に痛快で楽しめる.
実際,最近の報道を見ていると,掘削井の基盤岩とか火星起源隕石の中から微生物の痕跡が見つかってきている.彼の予言の少なくとも一部はぞくぞくと的中している.
いちおう,一緒に読み比べた方が良い正統的な教科書も紹介しておきます.
石油地質学概論(氏家良博・著,東海大出版会)
この本にも,いちおうゴールドの石油無機起源説は「軽く」解説されています.(2002/11/2)


生成する生命:生命理論 I(郡司ペギオ−幸夫・著/生成する生命:生命理論 I(郡司ペギオ−幸夫・著/哲学書房)

不眠の方にぜひ勧めたい。この本を読めば即効で寝れます。
ペギオさんの本はポスト構造主義の主張をある程度理解していないと、もはや全くわからない。

合わせて読むべき本:

特に最後の「時間を担う形態」は、唯一、多くの方にとってマトモに判読可能と思われるペギオさんの著作である。
黒木さんによる「ペギオ亀」はかなり面白い。ペギオさんのキテレツな実験の一端に触れることができる。

実は郡司さんは、私の先輩である(東北大地質学古生物学教室出身)。
学者としてもアクティブで学会等で良く見かけるし、集中講義にも来たことがあるし、後輩にとってはそんなに遠い存在な先輩ではない。
大学院生時代のバイタリティー豊かな活動ぶり(?)も伝説になっている。
しかし、もともと我々と同じフィールドジオロジストとしての教育を受けたはずの郡司さんは、今や完全に「我々とは遠い、メタサイエンスな世界の」ペギオさんになってしまった。

ちなみに「ペギオ」を名乗るのは、彼の博士論文からである。
まだ「ペギオ」というホーリーネーム(!?)を名乗る前、つまり院生時代に書かれた下記の論文は、とりあえず普通の進化生態学の論文と呼べなくもない。

郡司幸夫(1986)、種子島沖における現世腕足動物の群集構造:不均質環境の競争モデルとその解析。化石、第40号、p.17-34。

さて、今回読んだ本の内容についてですが。
科学も社会的な構成物である、というストロングプログラムの主張を、その事実だけ厳然と受け止めながら、そこで思考停止とか、一部の哲学者や複雑系研究者が陥るようなアナーキーな不可知論には与しない。
「じゃあ、観測者の”わたくし性”も積極的に介在させた新しい科学モデルを再構成しちゃえばいいじゃん」というのが、ざっくばらんに言えばペギオさんの主張だと思う。
そういう「科学」はもはや決定論的に現象を予測できず、まぁ我々が馴染んでいる「科学」に比べれば「弱い科学」なんだけど、実は生命科学を扱ううえではわりと面白い予測を与えなくもない。ただ、僕個人の研究テーマにはどう活用すれば良いのか、全く検討もつかないが。。(2002/11/10)


白亜紀に夜が来る(J.L.Powell、著/寺嶋英志・瀬戸口烈司、訳/青土社)

恐竜絶滅の隕石衝突説成立にまつわる、生々しいドラマである。
隕石衝突説の登場からまだ20年も経っていないが、その間に保守的な地質学者・古生物学者からなされた強力な反論の数々に、多くの科学者が結集してデータの集積と新しい観測技術の開発を行った。
つまりこの論争のおかげで、大衝突そのものについてだけではなく、地質学・古生物学分野全体に大幅な進歩がもたらされたのだと言う。著者は地質学に黄金時代の到来を告げる。

この本の訳者に瀬戸口先生が加わっているのが、私にとってきわめて印象的である。
現在の日本を代表する古脊椎動物学者の瀬戸口さんは、隕石衝突が恐竜絶滅をもたらしたという説に最も懐疑的な方の一人だと思う。
瀬戸口さんはむしろ、動物群のターンオーバー(より適応した動物群、この場合は哺乳動物による恐竜との漸進的な入れ替わり)を、陸上脊椎動物全体の進化傾向として強調されている。

瀬戸口烈司, (2000), 新生代の哺乳類進化と絶滅事変。月刊地球号外、第29号、p.200-211。
しかしこうした「漸進的な入れ替わり」は、この訳本の中では繰り返し強い調子で否定されているのである。
ただ、衝突説はまだ、生物の「差別的絶滅」−なぜ恐竜が絶滅し、カメやワニが生き延びたのか−を完全には説明できていない。
地球外天体が地球の歴史にどのような研究を与えてきたのかという研究は、まさに今始まったばかり。宇宙まで視野に入れた新しい地質学が、今後大きく発展していくかも知れない。(2002/11/16)


表徴の帝国(ロラン・バルト、著/ちくま学芸文庫)

夢。一つの異邦の(奇妙な)言語を知って、しかもそれを理解しないでいること。
その外国語と母国語との断絶を認めたまま、言語の持つ表面だけの相関性、社交性、日常性によってその断絶の穴埋めを全く行わないでいること。
新しいその言語のなかにはっきり屈折して現れている母国語の限界を知っただけに留めておくこと。
知覚不可能の体系を了解したままでいること。
私たちの<現実>を、もう一つ別の構成法の働きのもとに解体したままでいること。
表現を行う主体の思いもよらぬ位置を表現の中に発見したままでいること。
主体の位相を転移させたままでいること。


(ロラン・バルト「表徴の帝国」・適宜改行を挿入)
ロラン・バルトってのは記号論や構造主義を文芸批評で実践した人として有名、らしい。
上記の引用は、日本訪問の時に書かれたエッセー集。つまり、「異邦の(奇妙な)言語」ってのは日本語のことだ。
2つの言語、この場合は日本語とフランス語という体系間の、埋めがたい断絶。たとえば、フランス語の「aller」と日本語の「行く」は意味的に対比できるが、イコールではない。
言語は記号のシステムであるが、記号の置き換えで他言語に完全に翻訳できるわけではない。記号の指し示す「本質」は言語間で共有されている、というのは幻想である。その「本質」の内容ですらも、僕らの文化的基盤によって構成された記号に過ぎない。
だから、ある言語で表現された文脈を、他の言語で完全に表現する事など、不可能だろう。
ロラン・バルトの夢は、2言語を相互翻訳する事なく、それぞれの言語の中で生きること。通訳不可能性の存在を認めたままその先を追及せず、断絶の中に心地よく身をゆだねること。

そんな事は夢でしかない。現実世界を生きる僕らは相互理解するために、たとえ多くの断絶が間に横たわろうとも、通訳せずにはいられないのだ。(2002/11/17)


地震予知はできる (上田誠也・著/岩波科学ライブラリー)

この人は超ポジティブシンキングだ。地震予知はいつか必ず実現すると言い切り、悲観論をバサバサと切り捨てる。
実際、彼が中心となって推進している電磁気を使った地震予知研究はまだまだ歴史が浅くて、日々がエキサイティングな問題発見の連続なのだと思う。悲観論に拘泥するヒマなんてないのだろう。
最近はあまりマスコミに出てこなくなって、ちょっと地味になってきてしまったような気がしますが。。(2002/11/30)


深海生物学への招待 (長沼毅・著/NHKブックス)

「地球を食べて生きている」深海の化学合成生物による、驚異の世界。
いや、すげー面白かった。この人もすげーバイタリティ溢れる科学者だ。
まだ見ぬ超深海の世界から宇宙まで、生命とは何かを知る旅は果てなく続く。(2002/11/30)


スカイ・クロラ(森博嗣・著/中央公論新社)

現役名大工学部助教授による、戦う宿命を背負った子供達の物語。
エリア88を髣髴とさせる戦闘機乗りの話なのだが、新谷マンガとの最大の違いは、この物語の中では人の愛・憎しみ・嫉妬・怒りといった感情描写がほとんど無い事にある。
ヒトとしての激しい感情を一切欠如させた登場人物たち。彼らは戸惑いつつも割り切り、生きるためだけに生き、生きるために殺す。
彼らの前に広がるのは、たとえ生であっても死であっても、この大空のような無限の虚無だ。

あまり書くとネタバレになってしまう。

・・・いや、今さらかも知れないけど、ひょっとして森博嗣ってのは感情描写がニガテなんじゃないか?
有名なS&Mミステリーだって加害者のどろどろした心理は一切語られず、犀川と萌絵の関係もいっこうに進展しない。
ヒトの内面の描写を詩的に淡々と済ますために、ワザワザ「特殊な人たち」を導入しているような気がしてきてしまった。(2002/12/11)


活断層 大地震に備える(鈴木康弘・著/ちくま新書)

活断層調査の一般向け入門書。活断層調査を全く知らない人はぜひ読んでおきませう。皆さんカツダンソウという言葉は知っていても、その危険性のリスク評価とかの実際は知らないっすよね。
私も阪神・淡路大震災の時には、神戸で寝袋生活をしながら広い範囲の震災調査をしたのですが。さらに、淡路島では人工地震による活断層の深部構造の調査にも参加したのですが。少なくとも我々の地表調査結果では、この本の著者と異なり、神戸市街には地震断層が存在しないということになった。余震分布がどの活断層系にも一致しないだけではなく、明らかな地表断層が神戸市街には一切なく、運動方向の食い違いも生じていない。被害はむしろ、ごく表層の地質とすごく良く対応している。たとえば旧河道や、かつて海岸線と平行な自然堤防の内側の湿地帯だった所と、地震被害パターンが非常に良く一致していたのだ。鈴木さんが精密地形判読によって検出した神戸市街の撓曲構造(元町撓曲)も、タダの沿岸堆積による構造じゃないのかなぁ。
いや、もちろん、山側にあれだけたくさん活断層があるのだから、平野側にそれと平行な活断層があったって全くフシギではないです。(2002/12/18)


レ・ミゼラブルI,II,III(V. ユゴー著、辻昶訳、世界文学全集6・7・8/講談社)

だぁ〜〜っ!
何度読んでも(2回目だけど)超号泣。もう涙とハナミズでティッシュの山ができるほど。。
こんな大作品が1800年代にベストセラーになっている国ってどうよ!浄瑠璃や歌舞伎の心中ものが幕末町人によって連日大入りってのとワケが違うぜ。人類愛とか人権意識とか、文化の根本で、この国にはかなわないと思わされる。
日本では少年少女の読み物として有名な「あぁ無情」とか、劇団四季のミュージカルとか、そういうのでも有名ですよね。
しかし私は、やっぱり完訳本がイイと思う。ちょっと分量はあるけど(ハードカバーだと2〜3冊、文庫だと3〜5冊)、ナポレオンのワーテルローの戦いとか、パリのストリートチルドレンや下水道の事まで、作者の尋常ならざる饒舌な語り口によって、革命前後のフランスの姿がイキイキと浮かび上がってきます。(2002/12/27)


できるかな(西原理恵子・著/角川書店)

25日に文庫版が出たので、思わず買ってしまった。

で、担当の新保くんが、「それならいい店があるよ」とゆって秋葉原の秋月電子とゆうお店につれてってくれた。
「うわあ、いろんなワケのわからない機械が馬ぐそのようにつまっているね新保くん。」
「それはいいところに気づきましたね。
ここにある部品を色々つなぎあわせると、ロケット砲や時限バクダンなどがそれはたのしく作れて、世の中がおもしろくない時にとても便利なんですよ。」
すごくナイスな宣伝っすね
秋月はこのコピーを店先に掲示すればさぞや客が増えることだろう。
電子工作マニアなら誰でも一度はお世話になる秋月。今でも、秋葉原に行くとつい立ち寄ってしまう。(2002/12/28)


風の歌を聴け(村上春樹・著/講談社文庫)

佐倉統さんの「進化論という考え方」(講談社現代新書)でシツコク引用されていたので、どんなもんかと買って読んでみたのだが。。。

けっ。
村上春樹の小説はどれも似たようなものだ。
出てくる主人公はオレと同年代かやや年下で、やたら軟弱で、感傷的で、世間一般に臆病に距離を置き、去りゆくものを何も追わず、自分を空虚に保とうとする。
生きていくのに、自分自身にすらしがみつく必要のないボンボンは気楽でいいね。オモチャが壊れても、また新しいものを買ってもらえる。愛する恋人と別れようと、さらには死んでしまおうと、新しい恋人が向こうからやってくる。そして、かつて愛していたかどうかまで忘れてしまう。
別にそういうヤツが居ても大いに結構。ただ、オレには共感できない、というだけのこと。
オレは失われたものを数え上げて後悔の歯ぎしりをし、「それでも何とかしなくちゃ」と、地下道で跳ね返る鉄砲玉のように右往左往する事でしか生きていけない。

欲しいものは、何十何百失敗しようと、自分で取りに行くべきだろう?
努力で勝ち取る喜びを知らなければ、失う悲しみの絶望的な深さとも無縁でいられる。この主人公や、多くの若者たちのように。

それでも村上春樹の文庫本が本棚に並んでしまうのは、やっぱり、主人公の自意識のカケラのようなものが、どっかオレの心の中でも切なく響くからなんだろうなぁ。。。。
もしかしたら、オレは村上春樹に「共感できない」のではなく、「共感したくない」だけなのかも知れない。(2002/12/29)


大地動乱の時代−地震学者は警告する−(石橋克彦・著/岩波新書)

これまた少々古い本(1994)だが、古本屋で100円で売られていたので飛びついてしまった。
東海地震の危険性を提唱した(そして現在の警戒体制の基礎を作った)著者が、豊富な歴史資料と最新の地震モデルによって、近く首都圏が大地震活動期を迎えることを予言し、東京の一極集中に警鐘を鳴らす!
特に幕末から始まり関東大震災(1923)に終わる前回の「大地動乱の時代」の描写はグイグイと引き込まれる。
改めて見直すと、私が参加しているプロジェクトもこの本の影響を大きく受けている。今年度掘削される鴨川は南関東地震の震源域が予想され、来年度掘削される足柄は小田原地震の震源近傍である。予想される震源のすぐ近傍で物理探査を行い、高感度地震計を設置する事が直ちにこれらの地震の直前予知につながるとは限らないが、この地域の地震発生機構の解明に重要な貢献をする事は間違いないだろう。(2003/1/2)


誕生日事典(ゲイリー・ゴールドシュナイダー&ユースト・エルファーズ、著/角川書店)

6月13日生まれ:遠くを夢見る探求者
6月13日生まれの人は、探求する人。遠く離れた場所や冒険を夢見てうっとりします。(中略)
「不可能なものはない」を信条にしているように見えます。障害を克服する自分の姿を思い描き、とても満足します。ときとして危険なのは、そんな勝利が空想に過ぎず、じつは自己欺瞞に満ちた非現実的な状態でしかないということです。(中略)
何かにつけ、日々の雑事、つまり生活するうえで配慮しなくてはならないことに意識が回りません。文字通り、あるいは比ゆ的な意味で、頭がいつも雲のなかをさまよっているからでしょう。(中略)
長所:心霊力に敏感 想像力に富む 冒険好き
短所:危険を求める 現実離れしている 偶像を崇拝する
あぁ、まさにオレだ。何も前提を置かれなくても直ちにオレの事を言われていると判る。ここまで当たると気味が悪い。
同じ誕生日の有名人で、ルイス・アルヴァレスなんてのもいたんだね。恐竜絶滅・隕石衝突説の立役者でノーベル物理学賞受賞者。(2003/1/5)


メディシン・クエスト:新薬発見のあくなき探求(マーク・プロトキン,著/築地書館)

筆者は著名な民族植物学者.アマゾンのジャングル奥地に分け入り,現地のシャーマンから秘伝の薬レシピを集めてくる.その材料は薬草だったり,虫だったり,カエルだったり,つまり自然からの贈り物だ.
最新の遺伝子工学は,そこから次々と薬効成分を抽出し,新薬を創造するのだ!
生物多様性の無限の可能性と,その保護の重要性を実感させてくれる.(2003/1/10)


知の歴史:世界を変えた21の科学理論(nature編集部/徳間書店)

これは絶対に買い、だと思う。20世紀の科学の歩みを、ネイチャーのエディターによる丁寧な解説とカラーの美しい図でフォローできる。
しかも、ネイチャーの元論文の和訳付き。
早速、代表的ないくつかの原文をコピーしてみた。比べて読めばさらに勉強になる。
古生物学者にとっては、「アウストラロピテクス発見」と「海洋底拡大」が重要だね。(2003/1/10)


東京大地震は必ず起きる(片山恒雄・著/文春新書)

人類の歴史は,科学技術が神話を崩すことで進歩してきた.
しかし,1995年1月17日の早朝5時46分,淡路島の北方から神戸市にかけての地域を襲った兵庫県南部地震の場合,安全神話を崩したのは,科学技術ではなく,専門家の無知であった.貴重な人命や財産の被害にあって,自分たちが考えていたことが「神話だった」と初めて気付いたのである.
筆者は地震学の専門家ではない.地震防災,とくに都市防災の専門家である.地震学者と同じく,阪神淡路の喪失感・無力感から出発しつつも,目指すベクトルは明瞭に異なる.まず地震予知は当分不可能であるという観点に立ち,それでも今至急にすべき,具体的な防災対策は何かを探ろうとする.
国や東京都の地震災害予測(人身被害,建物被害,ライフライン被害,経済被害)は,どのようにして作られたのか.実際は非常に多くの仮定に基づいて作成されている.本書では,新聞等のメディアには出てこないその予測策定の仕組みが分かりやすく解説されている.さらに,その災害想定に基づき,対応策と心得を明快に示している.
この本は首都圏に住む人には必読じゃないかと思います.
ちなみに,著者の片山さんはウチ(防災科研)の理事長だ.直接話した事はない.(2003/1/20)


カンブリア紀の怪物たち(サイモン・コンウェイ・モリス/講談社現代新書)

バージェス頁岩の動物群を中心とした生物進化のドラマを、この魅惑的な動物群を明らかにしてきた当事者が語る。
バージェス頁岩はグールドさんの「ワンダフル・ライフ」で有名になったが、当事者のサイモン・コンウェイ・モリスはグールドさんの進化物語の中核である「悲運多数死」に対して批判的である。
「もう一つのドラマ」は、説得力があって、面白い。積ん読にしないで、もっと早く読めばよかった。。(2003/1/27)


コモンズ(ローレンス・レッシグ著/山形浩生訳/翔泳社)

うぐぅ。。。。スゴイ本だ。語り口は妙に軽いが(山形浩生の文体ゆえ)、内容は重い。圧倒された。
インターネットで実現されてきた自由、それを支えてきた技術と精神、そしてそれらがいま直面している危機−これらが、この本では圧倒的な説得力を持って分析されている。
問題を自由vs.規制の二項対立にすり替えてはいけない。自由で豊かな文化の発展を保証するために、規制は機能するべきなのだ。
通信技術の未来に興味がある人は必読。(2003/2/23)


三葉虫の謎(リチャード・フォーティ著/早川書房)

なぜこの本が、生物学、しかも昆虫のコーナーにあるのだっ!>ジュンク堂
いやしかし、この本は面白かった。読んだ後は、自分の中の三葉虫世界が何倍にも広がったように感じた。
特に、三葉虫のカルサイトでできた目の話、サイモン・コンウェイ・モリスとグールドの間の有名な確執、悲劇の古生物学者・カウフマンの戦火に切り裂かれたラブ・ロマンスなんかが印象に残った。
古生物学者が化石の探求に打ち込む時の、静かな、しかし消えることのない熱い情熱が伝わってくる。(2003/2/24)


大絶滅:遺伝子が悪いのか運が悪いのか(D.M.Raup著,渡辺政隆訳/平河出版社)

タマには科学普及書も読んでみようかと.
しかし,この本は薄いね.アッという間に読み終わってしまった.

ラウプさんは,古生物学に統計的な手法を持ち込んだヒーローの一人である.
彼の論文は,Paleobiologyなどの革新的な雑誌でよく見かける.彼の大量絶滅に関する議論は過激であるが,数理モデルと統計学的検定の裏づけによって慎重に議論されているので,読んでいて「ほぉ〜」と感心させられるのだ.
ただ,この本は1996年の本なので,今となっては古いアイデアも多い.

どーでもいいけど,訳者の渡辺政隆さんは「浮遊性有孔虫」という語を知らないらしい.「プランクトン性有孔虫」って何よ!?進化生物学を専攻している人が「断続向上進化」(punctuated anagenesis:断続平衡じゃないよ)のモデルとなった浮遊性有孔虫を知らないなんて,カンベンして欲しいなぁ..(2003/4/15)


生き物をめぐる4つの「なぜ」(長谷川眞理子・著/集英社新書)

生物のフシギを解きほぐす4つの視点−「至近要因」「発生要因」「究極要因」「系統要因」.これらについては,もうバッチリだね.この本では蛍の発光や有性生殖の起源,鳥の渡りなど,古くて新しいナゾの数々を,この4つの視点に照らして整理して示してくれる.面白くて分かりやすく,一気に読めてしまったのだ.

化石を研究している「古生物学」の立場から言うと,まず「至近要因」はほとんど分からない.昔は生化学ならぬ「古生化学」がブームになった事もあったが,材料を得る困難さもあって,手法としてはもう行き詰まってしまっている.
形質の適応的な意味を探る「究極要因」は,個体群動態を化石群集から解析する等の手法で,ある程度解明できる可能性がある.よほど高分解能な時系列記録が得られないと難しいだろうが,手法としては現在の進化生態学のアナログだ.
「発生要因」の解明には,その生物の発生過程が化石として残る必要がある.殻が付加成長するような生物(貝とか有孔虫)や脱皮してそれぞれが化石を残す生物(三葉虫や貝形虫)なら,解明できるかもしれない.
古生物学の独壇場と言えば「系統要因」だろう.生物が辿った系統そのものは分子系統でも明らかにできる.しかし,特定の形質の系統は,その形質をコードする遺伝子が特定され,なおかつその遺伝子の系統関係を編めなければならない.ほとんどの形質はポリジンなのだから,そんなことは非常に困難だ.その形質が化石に残るものであるならば,化石記録こそが直接的に系統要因を明らかにできる鍵である.

まぁ,生物だけではなくて,古生物学に対しても「4つの視点」を意識してみようかなと思った次第.(2003/5/2)


地震予知と社会(神沼克伊ほか著/古今書院)

地震学者の社会に対する役割りについて,地震学者,行政,およびジャーナリストの観点から論じている.地震の直前予知は不可能だ,という事は既に地震学者の中でもコンセンサスとなりつつあるが,東海地震については議論が分かれている.地震予知研究のために膨大な予算を使う「世界一の地震予知大国」である我が国において,真に役に立つ地震研究とは何か,国民への説明責任をどう果たすのか,成果を受け入れる側の「成熟した社会」とはどのようなものであるべきなのかが,今まさに問われようとしている.
執筆者の人選も良く,最後の対談も全体を理解するうえで効果的だと思った.(2003/5/31)


生命世界の非対称性(黒田玲子・著/中公新書)

人体は左右対称だが,それを構成する蛋白質のもととなるアミノ酸は全て左旋光であり,その蛋白質をコードするDNAは全て右巻きである.こうしたミクロレベルにおける生物の非対称性は,いつ,どのように生じるのか?
医薬品の話,ラセミ化年代測定の話,化学進化の話,ともかく生命分子の非対称性についての話題が新書サイズに盛りだくさんだ.しかし,前半の用語説明の章は猛烈に退屈で,読んでいて眠くなる.キラル,アキラル,回映,映進,エマンチオマー,ラセミ・・・・はるか大昔の教養部時代にそんなことを習ったような気もするが,もうぜんっぜん覚えていないっつーの!(いばるな)
とにかく,前半の基礎用語の理解に時間がかかったので,そんなにスラスラとは読めなかった.つくばからJAMSTEC間までの,往復の電車内で読めば丁度良いぐらいか?(2003/6/2)


地質学者アーサー・ホームズ伝:地球の年齢を決めた男(チェリー・ルイス,著/高柳洋吉訳/古今書院)

私の「師匠の師匠」が訳した本となれば,読まないワケにいかない.
岩石の放射年代測定手法を確立し,はじめて地質年代尺度を作った人のドラマ.現在,地球の年齢は約46億年前と見積もられている.しかし,この放射年代測定の手法が認められるまでは,地球の年齢は「現在の地温勾配と地熱の冷却速度」や「現在の全堆積物厚と地表の侵食/堆積速度」,「現在の海洋塩分濃度と河川からの塩分供給量」などのパラメーターから割り算されて求められていて,それらによって見積もられる年齢はせいぜい1億年ぐらいのものだったらしい.そうした旧来の「砂時計式」な年代測定手法と,ホームズが提唱した放射年代測定法との対立は,前世紀半ばまで長く続き,数値年代が入った最初の地質年代尺度が作成されるまでの道筋は決して平坦ではなかった.
この本は,そんなドラマを活き活きと伝えてくれる.

現在,私は数千万年前ぐらいまでの年代を数十万年以下の精度で年代決定できるような年代尺度を作成するための研究を続けている.高精度な時間スケールは,地質現象の対比だけではなく,進化やテクトニクスといった重要な現象に,時間微分,すなわちダイナミクス記述のための視点を与える.放射年代測定がもたらした地質学の進歩は,まさに革命と呼ぶにふさわしいものだと思う.(2003/6/2)


超秘湯に入ろう!(坂本衛・著/ちくま文庫)

元国鉄マンの著者が青春18きっぷを駆使し、誰も知らない秘湯中の秘湯を巡りまくる!
入る温泉は、入浴用に作られている温泉に限らない。このヒト、なんと飲泉専用洗濯専用の温泉まで強引に入ってしまう。このあたりが普通の秘湯巡り本との最大の違いか?
そんなこんなで巡った温泉1042箇所。ハンパじゃないぜ、このオヤジ。(2003/7/5)


24人のビリー・ミリガン(上・下)(ダニエル・キイス、著/早川書房)

「アルジャーノンに花束を」の作者が迫真の筆力で描写する、実在の多重人格者のドキュメント。
二重人格と言えば「ジキル博士とハイド氏」が有名だが、このビリーはなんと24重人格である。
養父による幼少期の性的虐待により多重人格症を発症したビリーは、主人格の喪失されている間に犯罪を犯してしまう。周囲の好奇と不信の目に晒され、収容所や病院を転々とさせられるビリーを救うために、精神科医や弁護士らは判事やマスコミと対峙する。
筆者をはじめ、ビリーを囲む人々の暖かな人間性が僕にも伝わってくる。続編(ビリー・ミリガンと23の棺)も読みたくなった。(2003/7/11)


関東大震災:大東京圏の揺れを知る(武村雅之・著/鹿島出版会)

綴じ込み地図の「1923年関東地震による旧東京市15区の震度分布」は必見。
南関東で起きるM8クラスの大地震なら、おおむねこの震度分布が再現される可能性が高い。町歩レベルでの震度分布はほとんど表層地盤のみで決まってしまうから。
94ページの関東平野全域における震度分布マップも重要。(2003/7/12)


ニッポン問題(宮台真司×宮崎哲弥、著/インフォバーン)

説明不要。ビール片手に軽く読むには良い本だ。理系ばかりの世界にいると、タマに「文系で切れるヤツ」の話を聞きたくなる。対談本の類はインタラクティブにツッコミながら読めるのでヨイ。

サイードは、「故郷がある者はよい、どこでも故郷だと思える者はさらによい、どこも故郷だと思えない者が最高によい」と行った。−−宮台
あ、オレそれ、最後の一番いいヤツだ(笑)。どこにいても故郷だと思えない!−−宮崎
はっはっは!オレもサイコーだと思うね。(2003/7/24)


墜ちていく僕たち(森博嗣・著/集英社)

う〜〜むむむ。。。
いつから、森博嗣は30分で読めるような本を書くようになってしまったのだ?
つーかたぶん、この本1冊書くのに数時間しかかけてませんよ?
徹底して一人称で語られる、ほとんど思考の速度そのもので語られているような日常の異常。やたら中性的な登場人物と、透き通るほど何も無いプラトニックな関係性。
そうだ、どこか懐かしいと思ったら、これはまさに同人誌の世界なのだ。そういう世界が好きな人は、ハマるかも知れない。(2003/7/25)


アナロジーの罠(ジャック・ブーヴレス、著/新書館)

ポストモダン批判、というか「知の欺瞞」(ソーカル&プリグモン)擁護なのだが、これがポストモダン哲学の本家であるフランスの哲学者によって書かれた事に意義がある。「知の欺瞞」後の哲学界を知る上で必読。
これを読めば、ポストモダンを標榜する哲学者ってのは本当に議論に値しない連中なのだと思わされる。思想界のモラルの喪失について惨憺たる気持ちにさせられるが、その中でも著者のような人物がいるというのが救いか。(2003/8/14)


生命40億年全史(リチャード・フォーティ、著/草思社)

う〜むむ。。。スゴイですね!生命誕生の化学進化から、原始社会の進化まで、40億年にわたる生物進化の物語を全て一人で書き尽くした大作。成功した古生物学者としての著者自身の経験もふんだんに出てきて、なんだかすごく饒舌な本だ。読み終わるとかなり満腹感が味わえる。(2003/8/15)


伝説巨神イデオン 劇場版(池原しげと、原作:矢立肇・富野由悠季/講談社)

コンビニで見かけたので思わず買ってしまった。
オレが小学生の頃のロボットアニメでしたね。ガンダムの直後だっけか?小学生のオレにはこの作品のテーマは難解過ぎて、良く分からなかった。
イデオンはスペースオペラとしては異例であるが、専守防衛に徹する逃亡者の物語である(あ、マクロス7とかもそうか)。主人公らは無限のスーパーパワーを持つイデオンとソロシップを駆るが、彼らの望みは平和に安住する事だけである。そして強大な宇宙軍を率いて執拗に彼らを襲撃するバッフ星人の側も、悪の野望をみなぎらせているワケでは決してない。むしろ彼らの論理は、「予防的なテロ防衛」とかほざいて小国にバカスカ爆弾を打ち込むような、現在の超大国の振りかざす「正義」に近い。以下、バッフ星人側の発言をピックアップしてみる。

P25(イデオンを見て)あんなロボットにわれわれの星を侵略されたら大変だ。いまここでたおせ!
P92 伝説の無限力が存在したとは・・・このまま異星人が持っているとなれば、われわれバッフ=クランが侵略されるかもしれませんな・・・・
P100 異星人がイデを使ってわがバッフ星を侵略しないとなぜいいきれるか!?
強力な大量破壊兵器は、それを持っているだけでも大国を恐怖に陥れ、理性を失わせる。もし相互の憎しみと不信を乗り越えられないならば、ともに滅びるしか道は無い。イデオンのエンディングが伝えるメッセージは重い。無邪気に宇宙戦争のカッコ良さに憧れたガンダムファンのほとんどがついて来れなかったのも、やむを得ないか?
第一刷発行は2003年8月6日。広島原爆の日に発行したのも、何かのメッセージなのかもね。(2003/8/16)


死都日本(石黒曜・著/講談社)

メフィスト賞受賞作な災害小説。破局的な火山噴火が、日本を壊滅に陥れようとする。九州の加久藤カルデラの噴火に伴う火砕流が南九州全域を焼き払い、さらに大量の火山灰による土石流が日本中の沖積平野を埋め尽くす!未曾有の大災害から日本を救い再生させるための、国を挙げての決死の戦いが始まる。
政治や経済についてはともかくも、筆者が想定する噴火のシナリオは地球科学的・防災工学的にほぼ正しい(P/T境界の原因が火山噴火だというのには議論があると思うが・・・)。読者が専門家であるほど、そのリアリティに圧倒されざるを得ないだろう。
文中で使われる専門用語にも概ね間違いは無く、火山学の教材としても秀逸と思われる。この本はオススメだ。

ただし・・・小説としては。。。ううむ。面白くて一気には読めるんだけどね。つーかこんな時間まで読んじゃったし。(2003/8/17)


グラフィック 日本列島の20億年(白尾元理・撮影/岩波書店)

日本列島20億年の歴史を代表する露頭・地形の写真集。日本最古の上麻生礫岩の露頭から、穂高の圏谷群まで。アクセスが非常に困難な地点が多く、大力作だと思う。もちろんオレが行ったことのある地点も多いが、それでもプロの写真家が撮ると全然違う。解説も、一部でちょい違う他はきわめて秀逸。市宿砂層(29)は潮汐サンドウェーブだから、河口とは全然限らないですよ。たとえば外洋でも、黒潮の流軸部ではこれと良く似た潮流サンドウェーブ堆積物ができる事がある。プラナー斜層理はデルタだけとは限らない。
こういう写真集は、自分が見て楽しいだけではなく、一般のひとに地球科学を説明する時の種本としてなるべく購入するよう心がけている。ただ、この写真集を学術目的で利用するのはムズカシイ。全ての撮影点が地形図にプロットされ、緯度経度まできちんと書かれているのに、なんとスケールがまったく入っていない。スケールのない露頭写真をそのまま受理してくれる学術雑誌など、存在しない。「写真集」としての芸術性を考えれば、当然やむを得ない事ではあるが。。。(2003/9/15)


深海底の科学(藤岡換太郎・著/NHKブックス)

プレートテクトニクスの実証過程において、日本発の研究が非常に重要な役割を果たしてきた。特にプレート3境界のうちの「沈み込み境界」については、日本における研究が決定的なモデルを提供したのである(上田誠也さんらが提唱した「比較沈み込み帯学」)。その中でも、潜水艇(しんかい6500)を使った「海洋地質学」の分野で、数多くの重要な発見をしてきたのが筆者である。日本周辺の海域ごとの海洋地質もわかりやすくまとめてあって、初学者にはなかなか便利。
たとえば海溝型地震の発生帯を詳細に調べるには、やはり筆者が言うように海洋地質のアプローチが有効だと思う。反射法地震波探査をするのだって陸上より海の方がはるかに深くまできれいなデータが取れるし、ボーリングだって陸上ボーリングだと用地や用排水の問題でなかなか思うような地点で掘らせてもらえない(海ならわりとどこでも掘れる)。地震計だって、日本のような所では海底にもたくさん設置した方が良いだろう。できれば、巨大地震が繰り返し発生するとわかっている所だけでも、孔内長期観測ステーションを設置しておいた方が良い(それが予知に役に立つかどうかは未知数だとしても)。
まぁ、私は今のところ陸上を研究している。陸上には陸上のメリットがある。それは踏査によって表層地質を高精度で明らかにでき、なおかつその物性を直接測定できる事である。特に、沈み込み帯の断面が隆起して地表に露出している房総半島は魅力的なフィールドである。(2003/9/21)


ビリー・ミリガンと23の棺(上・下)(ダニエル・キイス著/早川書房)

「24人のビリー・ミリガン」の続編。忌まわしい幼児虐待を受けた青年が多重人格を発症し、やがて罪を犯す過程を辿ったのが前作だが、この続編では収容され非人間的な極限環境におかれた彼が、検事や無理解な医師、政治の圧力と闘い、やがて自由を勝ち取るまでの日々が書かれる。
シーツをほぐした糸で院内での虐待を記録し、叛乱を組織し、さらには脱走する。前作までの、受動的な、弱者の逃避手段としての多重人格描写は無い。極限状況の中でなお生き抜き自由を得ようとする、闘う青年の姿がここにある。脱走後ふたたび逮捕・連行され、死を賭した断食の中で、彼の分裂した人格はついに統合を果たす。

・・・ノンフィクションなのがすげーと思った。つーか、あまりすごすぎてビリーには共感できない。むしろ、ビリーに信頼され、また非常に困難な立場から彼を見守り続け、時には共に闘った著者のダニエル・キイスにこそ心を打たれる。著者のビリーに対する視線は、常に温かく、優しい。全編を通じて伝わってくる著者のメッセージは、人間の心に対する「センス・オブ・ワンダー」だ。(2003/9/23)


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